日本の農作物を食べること。それは、農業なのです。
CL:JA福井県中央会
CD,C:野尻昌明
AD,D:中野勝巳
日本の食糧自給率って、約40%。とは、もう何年も啓発している。ところが、自給率は上がるどころか、下がる一方。僕がこのシリーズを担当してから、ほぼ10年。実質は30%くらいに落ち込んでいるのではないか。
と、ここでこう書いても、実際誰も危機感を覚えないのでしょう。だって、家でも、外でもたいがい食べたいもの食べてるものね。
いろんなアプローチで企画してきた広告シリーズだけど、今回特にこのようなコピーになったのは、北朝鮮問題と、近所で食べた地元のお惣菜。
北はあれだけの目にあっているのに、穀物自給率で計算すると日本より38%も勝っているというショック。一方、近所で食べた実家のような食事代がなんと1500円。なんなのだ!?これは???要するに、海外産食糧がカフェや、ファーストに姿を変えてお安く私たちのお腹の中に入ってきているのだ。
あ、もうひとつあった。乳がん派生率全国第2位の福井県。食品との因果はわからないけど、年表と見比べると、高度成長期(食の欧米化)とぴたり符合する。
で、悔しいのは、こんな大事なことを、なんでもっとわかりやすくアテンションしないかということ。
ニュースで「WTOが今年も難航してます」ってだけインフォしても、誰もわかんないって。
今回は、文字のみで攻めて、記事体広告として呼んでくれた人が多いらしく、なかなかの反響だったらしいです。若い人は、読んでないんだろうな。このまま自給率が減って、本当に困るのは、君たちなのに。
日本の農作物を食べること。それは、農業なのです。
はっきり言って、日本の食料自給率は、先進国最下位です。(カロリーベースの場合)
諸外国の2002年のカロリーベースによる食料自給率を見ると、フランス130%、カナダ120%、アメリカ129%を大きく下回り、先進国と呼ばれる国の中では唯一50%に満たないのは、わが国だけ。穀物自給率にいたっても173カ国中、124番目。日本を上回る国にはオーストラリア198%、タイ156%、中国101%はもちろん、南アフリカ92%や北朝鮮78%、スリランカ69%等、ちょっと意外な国々もあります。ちなみに日本は28%です。もっと言いましょうか?主要先進国(30カ国)穀物自給率で試算すると、日本は28位で28%なのですよ。
食料自給率=(国内生産)÷(国内消費)×100という計算式ですから、食料自給率が100%に満たない国は国内生産食料では国民をまかなえないということになります。つまり、なんらかの貿易による混乱、BSEや鳥インフルエンザ等の事故、兵糧による経済制裁等を受けると、国としてたいへんな危機を迎えることとなります。
さて、このように重要な貿易でのかけひきなのですが、近代の国際貿易について触れておきましょう。
近代貿易の、光と影。
…1930年代、世界各地で壊滅的な不況が訪れました。その打開策として多くの国が、関税を引き上げたり、貿易の数量制限をしたり、為替の取り扱い制限で貿易障壁を設けたりと、なんとか自国の産業を保護しようとしました。しかし、その結果、世界全体の貿易秩序が混乱し、世界経済全体がますます不安定なものとなったのです。後に、これが第二次世界大戦の一因になったのではないかとの指摘もあるくらいです。
それでは世界貿易の秩序を作ろうと、各国は貿易面から国際経済を支える枠組みとして、GATT(関税と貿易に関する一般協定)を締結し、1948年より貿易に関する国際的な枠組みとしてGATT体制を機能させることにしました。ところがGATTでは、輸入の禁止や数量制限など、様々な制限措置を関税というシステムに置き換えることとし、各国間の貿易を平等にしようとするあまりに、かえってやりとりが難しくなってしまったのです。
WTOという理想貿易。
その後、1986年に開始されたウルグァイ・ラウンド交渉においては、貿易ルールの大幅な自由化のための、より強固な国際機関を設立する必要性が認識されるようになりました。そこで、1994年のウルグァイ・ラウンド交渉妥結の際、世界中の国々が自由貿易を行えることを目指したWTO(世界貿易機関)が設立されることになりました。しかし、世界中が自由に貿易できるというWTOは、確かに理想なのですが、各国が持つ利害やリスクを考えるとあまりにも夢のような機関だったのです。
WTOへのステップ、FTAという名の進化型理想貿易。
FTA(自由貿易協定)とは、二国間(たとえば日本とオーストラリア等)または地域間の協定により、モノの関税や数量制限など貿易の障害となる壁をお互いになくし、自由貿易を行なうことによって利益を享受することを目的とした協定です。世界各国どの国でも!というと、貿易の収拾がつかなくなることから、まずは二国間ずつ順番に協定を結び、やがて相手国がどんどん増えて世界中に広がることを目的とすることが発展型貿易協定(WTO)へのステップといえます。
ところが、FTAによる絞込みを行うと、相手国によっては貿易対照が細分化され物質のやりとりだけではバランスが取れなくなってきたのです。そこで、貿易という枠組みを、モノからコトへも広げようということで考案されたのがEPAなのです。
貿易の対象をさらに自由化した、EPAの影響とは。
EPA(経済連携協定)では、単に関税を撤廃するなど、通商上の障壁を取り除くだけでなく、FTAの要素に加え、締約国間で経済取引を円滑化し、経済制度の調和、サービス、投資、電子商取引等、さまざまな経済領域での連携強化・協力の促進等をも含めたものも貿易対象とします。これは、介護サービスや、特殊技能を有する人材をも含もうというものです。
このような動きの中で、日本も、FTAはWTO体制を補助し、更なる貿易自由化や経済活性化を推進するなどの観点から有益であるとの認識を持つようになり、FTAを含むEPA(経済連携協定)の締結に向けて考慮しています。
アメリカの自由貿易ミッション。
アメリカは強い食料生産力を持っているにもかかわらず、自国よりも貿易の農業競争力が強い国との貿易では、重要品目の開放は断固として拒絶しています。
たとえば、タバコには350%、ピーナツバターは132%、ピーナツは140%という高い関税をかけるなど、自国にとっての重要品目については関税率割当により食料自給率を強固に保護しているのが現状です。
EUの自由貿易ミッション。
EUがメキシコと結んだFTAでは、生きた牛、牛肉、豚肉、家鶏肉、塩漬け・乾燥・スモーク肉、酪農品、切花、穀物・同派生品、肉・魚等の調整品(ソーセージ等)、砂糖・チョコレート、トマト調整・保存品、果実加工品など、多数の基本的産品を協定外としています。
このようにEUもアメリカ同様、国内に影響が起きそうな品目では協定を結んでいないのです。
日本農業の歩むべき道とは。
農林水産品の市場開放について、農林水産品の中には、欧米と同じく、我が国にとって関税撤廃が困難なものがあります。これまでも「守るべきものを守り、譲れるものは譲る」との考え方で交渉に当たってきました。
しかし、日本がFTAを考えているアジア諸国は、ほとんどの農業部門で日本に勝る競争力を持っています。食料自給率40%という日本は、「相対的に弱い部門の関税撤廃は断固拒否する」というアメリカやEUの姿勢にならったとしても、譲れる分野は極めて限られたものしかありません。つまり、日本の生産物はそのほとんどが弱い部門であるために、FTAについてはきわめて慎重な交渉を続けなくてはいけません。
関税が撤廃され、安い輸入農産物が市場に出回れば、日本の農業経営が圧迫されるのは必至です。農水省の予想によると、FTA、EPAを行うことで起こる国内の農業、雇用を含む地域経済などへの総合的な損害打撃は、なんと2兆円規模。さらに、約40%しかない日本の食料自給率が、30%台に落ちるとも言われています。これでは、19年度から実施に向けた、農業の担い手育成や構造改革などの生産現場の努力を無にするだけでなく、日本農業は崩壊の一途をたどることになってしまいます。
そろそろ、産業としての見直しと、職業の場として農業を見つめないとこの先の日本はどうなっていくのでしょうか。先進国と呼ばれる国の大半は、1〜3次産業のバランスを保っています。工業製品にしがみついて、農業をおろそかにしてしまったつけは必ずやってきます。万が一、食料を100%貿易に依存し、国内自給率ゼロになったとき、日本は世界に対しての強い発言権を失うのではないでしょうか。この問題は、JAのみならず、国民ひとりひとりが意識していかないと、大変に危険な話になるのです。
心配です。WTOの交渉。
WTOの抱える問題点とは、工業製品と食料の貿易を同じテーブルにあげていることから起こる問題なのです。たとえば、日本がアメリカに、自由に自動車を輸出させてくれと言います。そのかわりアメリカは、了解するから日本の食料はすべて輸出させてくれと言うとしましょう。そこで利害が一致したとすると、日本が必要とする食料を自由にさせてくれという条件を出すとしましょう。もしそれで、貿易が成立してしまったら日本の食文化や農業環境はどうなるのでしょう。水田や農地は遺跡のごとく少なくなり、私たちのお腹はほぼ100%輸入品で満たされるのです。燃料、軍事ばかりか、食料までも海外に頼っているなんて、農業関係者ではない人でも不安ではないですか?
福井県はしっかりした農業があるが故に、長寿の県に選ばれたり、子供の出生率が伸びているという全国でも稀な県なのです。そんな福井県に生きる私たちは、農という業を守るだけではなく、農という日本の底力を失いたくないのです。
いま、私たちが農業にできること。それは、私たちが日本の農作物をおいしく食べること。
そんなささいなことも、日本の農業に参加することだと考えます。
だから、農力。
JA福井県中央会
参考資料
全国農業協同組合中央会 資料各種
農林水産省公式ホームページ:http://www.maff.go.jp/ 等
コメント(0) | 2007年03月28日 16:39
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